東大地震助教大木さんのブログを読む.


彼女は正確には地震学者でも地震そのものではなく,防災教育が専門らしい.そちらへ転身したと記述あり.
だから,いつも「私と話をした人は死なせない!」と強い思いをもっている.
リスク研究学会大会発表論文賞を取った論文の内容もこんな感じだ.

東日本大震災後,西日本の住民を対象とした社会調査から,危険と感じる津波の高さを,震災以前よりも高い方へ変化させたという結果が得られました.危険と思う津波の高さについて,震災前には「1m程度」と回答していた人が70%いたのに対し,震災後は,45%程度に減少してしまっています.実際には,大人であっても50cmの津波に対して立っていることはできません.つまり,震災後に日本人は,津波の高さに対する認識をかえって危険な方へシフトさせてしまったということになります.

確かに興味深い.震災後に,危険と感じる津波の高さが上がるのなら理解できるが,実は逆だと.


私と同い年の彼女が地震学者を志したのには,明確なきっかけがある.阪神淡路大震災だ.防災知識がないからといって理不尽に死んではならない.
ちなみに共同研究者の山田さんが経済物理を志したのは,アジア通貨危機だ.関係ない現地の人の生活が理不尽に破綻してはならない.
「理不尽に立ち向かう」のは強いモチベーションだ.


翻って私の理不尽はなんだろうかと思ったが,理不尽に立ち向かおうと思って,研究を志したのではなかった.
研究をしたいから,だ.
これではモチベーションが弱いのだろうか.


なんで研究がしたいのか,それは分からないことを理解したいから,だ.
私に取って分からないことは,社会全般だ.それを物理で理解したい.
なんで人は殺到したり,熱狂したり,何か見えないもので導かれるように動いてしまうのはなぜか.
何か見えないものは糸?ミーム?空気?
それはどういう構造をしていて,どんな特徴があって,制御可能なのだろうか.
もし,制御可能な部分があれば,ナチスの台頭のような社会の理不尽な熱狂を制御できるかもしれない.
SF作家,伊藤計劃の本の話みだいだけれど,本気で理解したいと思っている.