音楽の繰り返し聴取が快感情に及ぼす影響 : リズムパターンの冗長性とハーモニーの典型性
THE EFFECTS OF REPEATED EXPOSURE OF MUSIC ON PLEASINGNESS : Redundancy of rhythm pattern and prototypicality of harmony
榊原 彩子
教育心理学研究 44(1), 92-101, 1996-03-30


音楽を繰り返し聴くと、始めはなんとも思わなかったメロディーが
心地よく聴こえだしたり、という効果を実験した日本語の論文。

音楽〜刺激と捉えると、刺激の繰り返し呈示が快感情に及ぼす影響について説明する際、
使われる最も重要な刺激特性として「不確実性(uncertainty)」というのがあるそうだ。
横軸に不確実性、縦軸に快感情を取った場合、そのグラフは逆U字型になるのが、
知られていて、不確実性が適度に存在する場合に快感情が最大になる。


では、その「不確実性」を定義するのに本論文中では2つの用語を使っている。
1つ目は情報理論の考え方である「冗長性」。
もう1つは「典型性」。
どちらも、不確実性が低いほど、高くなる。


冗長性はある旋律内に同じメロディー(リズムパターン)が何度あるかで実験をし、
典型性はある旋律内に同じハーモニーが何度あるか、すなわち何度転調するかで実験をしている。


結果は冗長性に関しては、初期快感情が最適水準よりも低ければ、
繰り返し聴取の効果によって、快感情がアップするが、
逆に、初期快感情が最適水準より、すでに高ければ、
繰り返し聴取の効果によって、快感情はダウンする。
逆に、典型性にかんしては、繰り返し聴取の効果は現れず、
初期快感情はほぼ横ばいのまま推移する、という結果。


かなり前の日本語で書かれた心理学の論文であるが、
海外の文献等の先行研究もしっかり調査されており、
イントロの部分だけでも、一読の価値はあり。