砂丘ダイナミクス
勝木厚成、西森拓
日本物理学会誌 第65巻 第12号 p.953 (2010)


現在の同僚の方の論文。
砂丘は動く。(移動して町を飲み込んだりして、地域によっては死活問題)
その結果、砂丘同士は合体するし、貫通するし、分裂するし、衝突する。
そういうダイナミクスを、観測、縮小実験、コンピュータ上での実験、理論解析といろんな側面から明らかにして行く話。
砂丘の移動は、砂丘を構成する物質と風の強さを反映するので、実はダイナミクスが明らかになれば、現在から過去にさかのぼって気象変動なんかも分かってくるという。奥が深い。


定量的な性質が明らかになってきていて、本論文でもフォーカスされているのが
「バルハン(barchan)」という三日月型の砂丘。大きさは高さが1m、長さは10m-数km。
これを縮小したものを水槽実験で再現している。(空洞実験では概ね成功していないらしい。)
バルハンの幅と高さとには、結構きれいな線形な関係があって(図2)、
それをこれまでのN模型、W模型では再現できていなかったものを、再現したのがK模型。
K模型では、サルテーション(saltation)*1と、なだれ*2のみを考える。


あとは「砂量の保存」と「形状の相似性」を仮定して、運動方程式を組み立て、
解く事によって実際に得られた結果と理論的な解析も一致する。


次はバルハン以外の砂丘、横列、縦列、星形砂丘などいろいろな砂丘へも解析を進めて行くのも課題らしい。

*1:数cmから数mの砂粒の移動を考え、砂粒が地面にぶつかるときに、風から得たエネルギーを他の砂粒に渡して、自分もバウンドするという輸送タイプ。他にも上空に巻き上げられ数km移動するサスペンションなど4つのタイプがある。

*2:砂山がある一定角を超えると大量の砂が流れ落ちる