Scaling theory of temporal correlations and size-dependent fluctuations in the traded value of stocks
Z. Eisler and J. Kertész
Phys. Rev. E 73, 046109 (2006)


平均と標準偏差の関係にみられるスケーリング則(Taylor's law)に関する論文。
使ったデータは2000-2002のNYSENASDAQのTrades and Quotesそれぞれ2647、4039銘柄。
スケーリングのべき指数が、平均を取る時間窓(time window)で変わるんだよ、という結果。
で、べき指数の時間窓依存性の起源は、1分間の取引量が多いことに由来し、
さらに1分間の取引量が多いと、一度の取引量が多いことからだという考察。


論文は、ハースト指数のアナロジーでスケーリング指数を説明しようとすることから始まる。
時系列が無相関なランダムウォークなら、ハースト指数Hは0.5だが、実際には0.5よりも大きい。
H=0.5なのは、特に時間窓の取り方を、20分未満(NYSE)、2分未満(NASDAQ)の時に観測できるが、
300分より大きい場合(NYSE)、60分より大きい場合(NASDAQ)には観測できない。
特に時間窓を1日以上にした場合には、ハースト指数はH=H*+γlogと、
平均値の対数に対して線形に増える形で表すことができる。(Fig.1)
同様にスケーリング指数も、20分未満(NYSE)、2分未満(NASDAQ)の時には0.6程度(shuffled dataと同程度)だが、
それを超えると、平均値の対数に対して線形に増えるようになる。(Fig.4)
さらに詳しく見て行くと、は、1分間の平均回数と、一度の取引量によって表すことができ、
それぞれのに対しても標準偏差と平均値にスケーリング則が成り立つ。(Fig.5)


ということで、観測したスケーリング則は、

  • 時間あたりの取引回数の揺らぎ
  • 1回あたりの取引量(volume)の揺らぎ

に起因していると考察する。


これまでの研究でスケーリング指数には0.5と1.0の2つのユニバーサルクラスしかないと、言われていたが、
これらの結果より0.67等の中途半端なスケーリング指数も、2つの組み合わせで、
どちらが効いているかを時々刻々変化させることで、記述できるようになるとのこと。

なお今回はarXivバージョンで読んだので、ファイナルPREバージョンも後でチェックする必要あり。
その後、さらに広範囲にレビューした論文もある模様で、そちらも要チェック。