Controllability of complex networks
Y.-Y. Liu, J.-J. Slotine, and A.-L. Barabási
Nature 473, 167–173 (12 May 2011)


ネットワークの制御可能性に付いて述べた論文。
ネットワークは有向グラフを用いる。


「制御」というのはネットワークに外力を入れた時、その影響により
有限時間内に初期状態から思い描く終状態へと遷移することを指し、
その遷移を引き起こすことが可能な、外力の行列が存在するかどうかで定義する。(Eq.(2)と(3)のこと)
元になっているアイデアは「Kalman's controllability rank condition」で、
これはカルマンフィルターで有名なカルマンさんのアイデア。(カルマンさんはハンガリー人で現在81歳。)


イメージとしてはネットワーク上を流れる流量は、ネットワークそのものによる影響と、
外力(=制御しようとする力)によって決まり、流量が時々刻々変わる時に、制御できるかを議論する。
ネットワークは時間発展しないが、流量は時間変化する。(Eq.(1)のこと)
すると、ネットワークはその機構によってはいくつかのdriver nodeに外力を入れるだけで、
その影響が全体に波及して、制御可能であることが分かってきたという。


実際のネットワークに対して、そのdriver nodeがどのくらいの割合で必要なのか、
またdriver nodeはどういう特性を持っているのかを調べて比較している。(Table 1のこと)
driver nodeの割合n_{d}が0.9大きいということは、外力は全ノードの90%に対していれないと、
全ネットワークを制御できないよ、ということを指す。


果たして結果は、遺伝子のネットワークはn_{d}が0.9程度になるのに対して、
携帯電話に代表される社会コミュニケーションのネットワークはn_dが0.2という値を示す。
すなわち、人間の社会ネットワークは少しのdriver nodeに外力を入れるだけで、
全体が制御できてしまう可能性を秘めていると言える。
またdriver nodeの持つ次数は、平均的な次数に比べて小さく(Fig.2のc)、driver nodeは
すなわちハブという訳ではなく、実は次数の低いノードであることを示唆している。
次数分布からdriver nodeの数を調べることができるので、すなわち、
統計力学的な手法を用いれば、入次数と出次数の分布を用いれば、driver nodeの数を予測できることを示唆している。(Supplement)