Time-Ordered Networks Reveal Limitations to Information Flow in Ant Colonies
B. Blonder, A. Dornhaus
LoS ONE 6(5): e20298. doi:10.1371/journal.pone.002029 (May, 2011)


アリの行動からネットワークを作ってその上で、情報伝達がどうなされたかを調べた論文。


1つの巣あたり11から90匹程度のアリの巣を6つ用意し、一匹一匹のアリの動きをビデオで記録する。
アリが時間あたりどのくらい移動したか*1というアリのmobilityの記録解析と、
他のアリとどのくらいの頻度でコンタクトしたか*2というnetworkの解析を行う。


解析する時の比較対象としてDiffusion modelを用意しておく。
Diffusion modelとは単純に物理の気体分子運動論(kinetic gas, ideal gas)と同じく、
要はランダムウォークで他のアリや境界にぶつかって跳ね返る、というモデル。
また、情報の伝達(information flow)は、アリ同士のコンタクトがあった場合、
その情報が伝わっていくとし、要はロジスティック方程式で仮定している。(Eq.1)


はたして、それらのDiffusion modelやロジスティックで想定される数に対して、
実際にアリのmobilityやinformation flowがどうなったかというと、
mobilityはモデルより遅く(Fig.7)、information flowもモデルよりも遅い(Fig.5)という結果になった。
またアリ同士のコンタクトの平均時間間隔は、およそ347秒、即ち6分程度だったらしいが、
この時間間隔の分布もモデルよりもテイルがながいベキ分布になることが多い。(Fig.6)

Thus, this study suggests that individual ants limit their mobility, resulting in long delays between interactions and limited information flow.


次なるモデルの拡張としては相互作用間にあるフィードバックを考えるのが有益であろうとのこと。
結語で、アリのコロニーが人間のネットワークや病気の拡散とどう違うのかを考えることで、
システム横断的に情報の伝播や、ネットワクークの時間発展に光を当てることになろう、と。


面白い論文でした。
生データもそのまま、ウェブ上から取得可能。とは言ってもPDFで170ページ分くらいある。

*1:距離は主に自分の体長の何倍かで定義

*2:コンタクトはアリの触覚が他のアリ触れることで定義; antena-body contact