「つながり」を突き止めろ
安田雪 (光文社新書(2010))


社会学者の書いた社会ネットワークの概説.
社会学者の扱うネットワークの話なので,ネットワークのトポロジー云々より,
タイトルにもあるように「人と人のつながり」に焦点を合わせた話.
だから,なぜ,つながりができたのか,維持できたのか,喪失したのかに重点が置かれる.
例えば筆者が学生時代にアルバイトでやっていた死亡届のデータ起こし.
最も重視されたのは,その死亡届の「届出人」だったとのこと.
それは,死亡した人と最後につながりがあった人,という解釈.


ちなみに歴史的な流れの中でバラバシやワッツ,増田さんなどの統計物理学者の登場も紹介される.

この事態に,20年前,30年前,それこそ統計物理学者らが関心を払わなかった頃から,ネットワークの分析に邁進してきた社会ネットワーク学者たちが悔しがらないわけはない.
ある社会ネットワーク分析の大家が,統計物理学者のバラバシの本および一連の論文について,まとめて書評を書いている.そのタイトルは,何と「Invasion of the Physicists (統計物理学者の侵略)」である.


筆者は解答が不明な何らかの問題に立ち向かう方法として以下の3つを挙げる.

  • 調査をして実態を明らかにする (アンケート等,社会学がずっとやってきたこと)
  • シミュレーションしてみる(agent-based はじめとする,PCで実験する工学的なアプローチ)
  • 数学的に解いてみる(物理,数学が得意とするところ)


そして,数学的なアプローチに対する意見としては,

抽象度の高さを学問の偉さを計る一つのものさしとするならば,問題の解き方において数学的解法以上にエレガントな手法はない.
(中略)
一度正しい解が導かれ証明がされれば,誤差や揺れが発生することもない数学的解法は,最強にして最善ということになる.

とのこと.「抽象度の高さ」「学問の偉さを計る」という言い回しが絶妙でさすがだなと思った.
しかし「謎を解く」という点においては,抽象度や学問など関係ない.
確かに数学であれば,エレガントな解法というのがあるが,
社会現象においてはそんなことは重視されない,と暗にメッセージが伝わってくるようだ.


ちなみにこの本は,初の紀伊国屋のアプリを使って電子書籍で購入をした.
予想以上に読みやすく,マーカーやメモも残せるし,かなり便利.
タブレット1台でいいし,電子書籍はかなり使える.

「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)

「つながり」を突き止めろ 入門!ネットワーク・サイエンス (光文社新書)


かじかんだ手でTrackpadを扱うと,すごくやりにくい...