群れはなぜ同じ方向を目指すのか?/レン・フィッシャー

ありの群れ,魚の群れ,人の群れの話.
複雑ネットワークの話や,人間の意思決定の話などもありネタは盛りだくさんな本.


2章,「群れと自己組織化」p.53

つまり私たちは集団内に別の目標が存在しないかぎり,たんに目標をもつだけで集団を導くことができるのである.
(中略)
自分たちが導いている相手からリーダーと認識される必要はないということなのだ.

Leadership, consensus decision making and collective behaviour in humans
John R.G Dyer et al. Phil. Trans. R. Soc. B (2009) vol. 364 no. 1518 781-789の実験より.
「黒幕」は存在しうると.


3章,「最短ルートの見つけ方」 p.66
蟻のコロニー最適化から,関心を持続させる方法を考察する.
それは

一発屋を目指すのではなく,時間の経過に従って次々と別の面を押し出す計画を立てること.

蟻のコロニーで言うと,

フェロモンの濃度を継続的に高めることで蒸発を防ぐのと同じ

すなわちreinforced random walkの考え方.


6章,「多様性から合意へ」
クォーラム(Quorum) : 「動物がある行動を示す確率が,すでにその行動を示している動物の数の顕著な非線形関数である」ことを指す.
こうすることによって,動物が身の安全を守ったり,食料にありつけたりする.
人もまた然りかな.例えば見るグラムの何もない空を見上げる実験.(15人が空を見上げれば通行人の45%は空を見上げる.)
カスケード効果のことを,クォーラム反応[定足数反応]というらしい.


8章,「意思決定のための単純な法則」p.194
ギーゼレンツァーの行った実験.ドイツの上場企業のリストを作り,ミュンヘンの街へ出かけて通行人に声をかけ,
どの社名の見覚えがあるか聞く.認知度が高かったいくつかの企業に通しすると,半年後,保有株の時価総額が47%増えていた.
今で言う,口コミの株価予測のリアル社会版とも言える.元ネタ記事

群れはなぜ同じ方向を目指すのか?

群れはなぜ同じ方向を目指すのか?


Bonnie Bassler: How bacteria "talk"
こちらも細菌たちの集団挙動として面白い.
応用すると,病気の治療なども可能となるそう.