JIMS「消費者行動のダイナミクス」研究部会

  • 日時 2010年12月8日(金) 午後6:00〜8:00
  • 報告1 国内ホテル予約サイトデータを用いた旅行行動パターンの統計分析
  • 佐藤彰洋 京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻
  • 我々は、約14,000ホテルが利用可能な国内ホテル予約サイトから利用可能プランに関するデータを毎日収集し、利用可能カレンダーに強く依存しており、土曜日と祝祭日に急減していることがわかった。更に、利用可能プランの存在確率を推定するために、有限混合ポワソンモデルとそのパラメータ推定方法を提案する。提案手法により得られたパラメータ推定値を用い、国内ホテルの需給バランスの時間推移を調べた。その結果、国内ホテル利用者のプラン価格に対する嗜好が時期によって大きく異なっていることを確認した。
  • 研究会メモ
    • データは著者自らアフェリエイトプログラムに入って入手している。
    • 日本全国の宿泊施設に宿泊した数が分かる。
    • 全国での宿泊人数の変動は、強いカレンダー依存がある。
    • 複数のポアソン分布による結果と考える。
    • 複数のポアソン分布はAICで最適にK個にカテゴリ分けした数、K=12程度。
    • ポアソンパラメータとなるのはカテゴリ内に存在する、利用可能な部屋数。
    • カテゴリ分けは、部屋が利用可能な確率(正確にはプランがavailableな確率)によって分ける。
    • 推定パラメータが多いので、初期値に依存してしまうが、ほぼ同じ値に収束。
    • パラメータの推定にはEMアルゴリズムというのを使う。収束が早いらしい。
  • 報告2 消費者の合理性に依存するマーケットシェア・ダイナミクス
  • 小野崎保 立正大学経済学部
  • 企業間競争の結果、勝者が生き残り市場は寡占化していく。誰もが当然のこととして了解するこの事実を、実は現在の主流派経済学はうまく説明することができない。本発表では、新古典派市場理論のかかる欠陥を克服する試みとして、限定合理的な消費者と企業からなるエージェントベース・モデルの構築およびシミュレーション結果を紹介する。モデルの一つの特徴は、消費者を集団として扱い、その企業間分布によりマーケットシェアを表現することである。この分布は消費者の合理性の度合を表すパラメータにより特徴付けられる。シミュレーション結果から、消費者が適度に合理的であるとき市場は寡占化し、シェアの争奪戦が展開されることなどが示される。
  • 研究会メモ
    • 実データではなく、シミュレーションの結果。
    • 北大の柳田達夫さんとの共同研究。
    • 経済学の人。
    • 消費者の企業(商品)の選択について、ミクロな視点からシミュレーションを組み立て、企業シェアの寡占具合を見る。
    • 消費者が自分に取って効用の高い企業を選択するが、その時にある確率で、自分に取っては効用が低いが、乗り換えた方が、実はいいかも?!、という好奇心に基づく選択をする場合もあると仮定している点が、既存の新古典派経済学(ミクロ経済学)と異なる点。これを「ソフトマックス行動選択」というらしい。
    • シミュレーションのキーパラメータとなるのが消費者の合理性の程度。