エコノフィジックス 市場に潜む物理法則

2001年に出た本で、2002年に修士課程のゼミ輪講で使った。

本書は、現実の経済現象を物理学の発想と手法とで、科学的に解析する新しい研究分野である「経済物理学」の基盤となる部分をまとめた入門書である。
経済物理学(econophysics)という言葉は、1997年にブダペストで開かれた研究会のタイトルとして初めて登場した造語で、文字どおり、経済学(economics)と物理学(physics)とを橋渡しするような分野を意味する。
(中略)
経済現象を科学的な視点で分析しよう、というアプローチ自体は新しいものではなく、たとえば、計量経済学金融工学にもみられる。そこで、まず、新しい分野としての経済物理学の特徴を一度説明しておく必要があるだろう。
一言でいえば、経済物理学の最大の特徴は、カオスやフラクタルなどに代表される複雑な物理現象を解析する、最近の統計物理学の成果を最大限に活用し、現実の経済現象を、実証的に物質科学と同じような視点で分析する点にある。
(中略)
コンピュータネットワークによって、世界中のマーケットで起こっていることがリアルタイムで観測できるようになったことは、物質科学にたとえれば、原子ひとつひとつが観測できるような顕微鏡が手に入ったに等しいほどの画期的なことである。
複雑で膨大な経済データは、科学者に取って宝の山であり、それをうまく解析していけば、今後、次々と新たな発見がなされるに違いない。
まわり道のように思えるかもしれないが、現実の複雑な経済現象に対処するためには、ひとつひとつ確かなことを確認しながら積み上げて行くような科学の手法を踏襲することが、最短最良の方法であると考える。

「まえがき」より