How You Met Me
Lada A. Adamic, Thomas M. Lento, Andrew T. Fiore
THE 6TH INTERNATIONAL AAAI CONFERENCE ON WEBLOGS AND SOCIAL MEDIA (ICWSM-12)


6月にアイルランドのダブリンで開催されたソーシャルメディアに関連する国際会議のプロシーディングス.
論文の内容自体は,ポスター発表になっているが,筆者のAdamicさんはKeynote speakerでもある.
ICWSM自体は前から気になっているのだが,採択率が20%とからしく狭き門.
去年はバルセロナで開催され,たしか成蹊大の山本さんと阪大の松村さんが参加していたはず.
今年はアイルランドのダブリンだった,来年参加したい.場所はどこだろうか.


論文の内容はfacebook上のコピペで改変されながらも拡散するテキスト情報を,meme(ミーム*1としてとらえ,トラックしました,という内容.
モデリングとか,数理解析ではない.実際,数式はいっさい出てこない.
memeというとらえどころのない概念を,膨大なfacebookのデータからあぶり出したという点がこの論文の重点.
Adamic自身はミシガン大だが,他の筆者の所属はfacebook
最大拡散したコピペ情報をトラックすると,なんとも2010年の7月1日から2011年の11月19日までのmemeは,2011年の8月10日には深さが82(82リンク先)まで広がっていた.
ただし,平均的なmemeの感染力は1日1000の勢いで落ちていく.


memeがコピーされやすい年代は20歳代がピークでその後,40歳代以降は急速に落ちていく.
これは最近のヤフーニュースでもいわれていたように,facebookユーザーでもっともアクセス頻度が低いのは55歳以上,というのとも一致している.参考
と,いうことは,よく考えるとこれはmemeのコピーというよりは,facebookの利用頻度の問題かもしれないが...


最もmemeのコピーがおきやすいロケーション,焦点(foci focusの複数形)は学校で,たとえ学校を卒業した後の大人になったとしても学校というキーワードではmemeがコピーされやすい.facebookのリンクも学校をトリガーにしておこりやすい.
また男女の違いも少し解析されているが,男性の場合は女性よりスポーツで,女性の場合は近所の世話付き合いで焦点が共有されいることが多い.
詳しい男女差などの解析はこれからだが,物理としての面白さではなく,社会科学としての面白さがある論文.


最近の大規模データを使った解析の論文として引用する価値あり.またmemeという話を使うときも同様.

*1:DNAに代表される遺伝子情報geneに対して,利己的な遺伝子で有名なリチャード・ドーキンスが唱えた概念で,思想などの個人がもつ文化的な情報.Wikipedia情報によると心から心へコピーされる情報.