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複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 /マーク・ブキャナン
作者は雑誌Natureの編集者.内容は主に,ワッツとストロガッツの提唱したSmall-world networkについて.
バラバシのScale-free networkの話もある.特に成長と優先的成長という点を評価している.
ただ,内容から察するにSmall-world networkにおけるショートカットのパスがあるノードが,Scale-free networkにおけるハブに対応するようだ.
9章の生態系をネットワークとして考える,の冒頭.日本人が科学的な調査のためなら,相当数のクジラを捕獲してもよい.また,ミンククジラは増加しており,それによって他の魚類が減少している,という論理展開に対して,痛烈に批判する.
複雑な生態系ネットワークを考慮するとそんなこと,簡単に否,であるこごは分かるはずだ,と.
10章,物理学で「流行」の謎を解く,は面白かった.ランダウらがKGBに捉えられたものの,実験物理学者のピヨトル・カピッツアの進言によって釈放された超流動に関するくだりも興味深い.超流動の現象を説明できそうな物理学者はランダウしかいない,と.
温度によって物質の特性が変化する,相転移.その転移は突然やってくる,それが社会現象ではティッピングポイントと繋がってくる,と滑らかに話を進めるあたり.
さすが,Nature編集者.確固とした科学知識&歴史的背景をベースに,あらゆる事象とつなげてバーッと話を展開して行く.
どうでもいいんだが,小さい頃作家になりたかった.
そのために,日々どうすればいいのかと考えていたら,ある日閃いた.
「ちびまる子ちゃん」の話みたいに,一つの動作,ある短い間の出来事を,いかに長く,面白おかしく伝えられるか,その能力があれば作家に慣れるのではないかと.
科学論文に向き合う日々になって,それを最近よく思い出す.
- 作者: マーク・ブキャナン,阪本芳久
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2005/02/25
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