悪魔の発明と大衆操作 ―メディア全体主義の誕生 / 原克

ここでいう悪魔とはナチス党のこと.
発明とは,ラジオ放送,テレビ放送,パンチカード.
パンチカードは,1882年MITの研究員がアメリカの国勢調査を機械化するために発明した.
紙に穴をあけて,穴に電流を通る,通らないをカウントすることで人手処理を大幅に削減.
そして,それが普及してドイツにもわたり,国民はパンチカードに性別,年齢,宗教,そして民族などを正確に記入することを要請された.
そのデータを頼りにナチスユダヤ人の住所,家族構成を特定し,連行した.
さらに大規模にユダヤ人を輸送するための,「特別ダイヤ」編成から,強制収容所での「選別」にもパンチカードが使われた.
そこには人が人として死ねない現実があった.そこにあったのは,ただのデータの紙.

大衆操作という意味では,特にプロパガンダの詳細が語られている訳ではないので,ちょっと肩すかし.
それでも初期のラジオ,テレビ,パソコンの使われ方が分かる点で面白い.必要な注釈や文献リストもあり.

悪魔の発明と大衆操作 ―メディア全体主義の誕生 (集英社新書)

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