空飛ぶ広報室有川浩

テレビドラマが面白かったので,一足先に原作を読んだ.ドラマより恋愛要素は少ないものの,そういえばこういう若い恋愛も絡んだ物語も久しぶり.空幕広報室に一人のりこむ,力の入った稲ぴょんが2006年頃の自分とダブって見えて仕方が無かった.無駄に力が入って,現場ではちょっと転がされている感じで.


私も一人で朝5時に家を出て,7時過ぎの飛行機で大阪へ飛んで,9時過ぎから消防に通っていた時期があったなと.元は自分が担当したシステムがトラブって,課長,営業以下引き連れて謝罪して,半ば人質のように現場でシステム改修をしていた時期.
最後の方は,担当窓口のカワベさんはすごくよくしてくれて,誕生日プレゼントまでもらったり.現場の同い年の隊員(星団の名前だった)とは個人的にもかなり仲良くなって,車で移動のついでに遠回りしてドライブしたり.


しかも,一生懸命トラブル改修で大阪へ通っている間,自分で勝手に結婚するもんだと思っていた当時の恋人に,よりにもよってふられた.やっと休みをもらって戻った春分の日の祝日だった.翌日からまた,土日もほぼ返上で,大阪で働かないといけない.身も心もボロボロだった.なんでこんなドラマみたいな展開なんだろうと,つくづく思った.その後の日曜に会社に戻ると,開発グループが薄暗い部屋でシステム改修のため働いていて,申し訳ないのだけれど,力が入らなくて.いつもは冷たい開発グループのリーダーにメッセンジャーで「何があったかしらないけど,元気出して」みたいなこと言われて,さらに泣けた覚えがある.ホワイトデーが過ぎた後に会社に戻ると,会社の机の上に,お供え物のように大量のお菓子が置いてあった.


今となっては,全部笑って話せるいい思い出.いつも,こんな物語を生きてこられている人生に感謝.常に全力で生きてきたことだけは胸を張って言える.こんな経験を持っている研究者なんてなかなかいない.研究に関する知識や勉強ではいろいろ足りないことは多いけれど,私には人にはない経験があるという点は,誇れる.そして,絶対に手放したくない人生の時間がたくさんある.


空飛ぶ広報室

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