Fluctuation Scaling, Taylor’s Law, and Crime
Q. S. Hanley, S. Khatun, A. Yosef, and R.-M. Dyer, PLoS ONE 9, e109004 (2014).

イギリスの月ごとの犯罪の発生件数時系列が,Taylor's fluctuation scalingを示しているよ,という論文.(Temporal fluctuation scaling) で,このscalingの係数を犯罪の内訳ごとや地域ごとでも比較した.すると,地域ごとでは係数に有意差はなかったが,暴力の発生件数は差があった.暴力事件はポワソン的だったが,窃盗は係数が大きい傾向があり,すなわち窃盗発生がクラスターする傾向があることがわかる.

犯罪件数と比較するデータとして死亡件数のデータで調べたところ,scaling係数と切片の関係を調べたところ.scaling係数が大きくなると,切片が小さくなる負の相関関係があるそうだ.これは犯罪件数でも同じ傾向.

また,FSはphotonの時系列解析にも使われているそうで,これは知らなかった.光検出に使われているCCD(Charge-coupled device;電荷結合素子)で,入力信号を測定するときにポワソン的だったかそうでなかったのかの判定に使えるそうだ.この話は,今後,私もTaylor's lawに関する話をするのに,応用例として使えそう.


データポイントは少ないし,フィッティング方法はただ単にログとった値に対して線形回帰しているだけなので,ちょっとその部分はいいのか,と不満ではあるのだけれど,まあこうやって犯罪の背後に潜む異なるメカニズムを探る一つの手段としてはアリかな,という印象.