その数学が戦略を決める
イアン・エアーズ (著), 山形 浩生 (翻訳)


ざっくり言うと,「データを使って科学的にものごとを考えよう」という成功事例集.
広告や映画のマーケティングや,政治の政策決定(予算を.どこにどのくらいつけるか)といったものにアメリカではどんどん活用されているらしい.それが別に大規模データでなくともよい.
小規模サンプリングでもランダマイズからの有意な差であれば採用するとか,ベイズの定理で確率を絞り込んでいくとかいろいろ方法はある.


特に印象深かったのは医療分野でのデータ活用の話.
通常,医者が患者に対して病気を診断するのは,自分が学習したときの知識(当然,どんどん古くなる).過去の経験から来る勘(思い込みとも言う)や「私はこういう治療で成功しました」てきな簡単な文献(膨大な論文を読みこなす時間がない)を参考したり.というかなりマニュアルな方法に頼ってきた.
しかし,イザベルがそこに登場した.
イザベルは医療情報に特化したgoogle検索みたいなもので,患者の症状を入力するとそれらしき病名を複数挙げてくれる.なので,医者が思い込みで突っ走るのを抑制し,いろいろな可能性を示唆してくれる.
統計はもともと医療の分野でナイチンゲールが病床管理につかっていたことが発端ともいわれているくらい,医療と統計は密接な関係.
命に関わることだからこそ,慎重に,最新の知識を結集すべしと思った.


この本は各章の後ろにまとめ書きもついていて助かります.


その数学が戦略を決める (文春文庫)

その数学が戦略を決める (文春文庫)