一九八四年/ジョージ・オーウェル, 高橋和久訳

1949年に,イギリス人作家によって書かれた本.
スターリン体制下の旧ソ連社会主義をモチーフした,すべての情報が統制された世界を舞台にしている.

「ビックブラザー(Big brother)」という言葉(全体を監視している見えざる目,的な意味で使われる英語)は,この本が発祥.
他に「ニュースピーク(New speak)」,「ダブルシンク(Double think)」という言葉もこの本から生まれた.
ニュースピークは,主義に逆行するような言葉はどんどん削ぎ落し,反乱さえも起こさせないようにするために言語を統制する,というのは恐ろしい考え方.これが以前読んだ,「ハーモニー」にも通じる点.
例えば,WonderfulとかFantasticそう言う言葉は,全部goodにveryを複数つけることで統一してしまう,
1つの単語には限られた数少ない意味しか持たせない,そうやって言語を統制していく省がある.
ニュースは必ず統制され,限られた都合のいい情報しか入手できなくなっている.
食事はただ体を維持するだけのもの,子供を残すためだけの夫婦関係,すべてはビックブラザーのために.


そんな世界でも,主人公を始めとする人はコーヒーの香ばしい香りを求め,甘美な恋愛をもとめて模索する.
しかし結局当局に捕まって,考えられる最も恐ろしい拷問を受け,人としてのプライドを投げ打って,最後にはビックブラザーを愛し始めるという,恐るべき結末.


私の感想としては,北朝鮮がこんな感じなのではないだろうかと思う.自分の子供ですら監視者で,そういう教育を国によってされている.(親でさえも,ビックブラザーに反すれば通報すべし,という教育.)
言語というのは,人の考えまでも変える,というのは的を得ていると思う.
ただ,どうやったらそれが測れるのか.

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)