偶然の科学/ダンカン・ワッツ

Everything Is Obvious*という原題の意味は,「*」にあって,「Once You Know The Answer」と続く.
答えを知っていれば,すべてのことは自明であるということ.
タイトル通り,答えさえ知っていれば,すべてのことは後付けで説明できる.エンロン破綻もITバブル崩壊も.
ワッツはもともと数学者だったのだが,本当に「社会学者」として生きているらしい.前書きにそう書いてあった.


ちょうど,デマ論文を書いていて引っかかる節があったのだが,p.109に

森林火災が手に負えないほど激しくなって燃え広がるためには,風や温度や低い湿度や可燃物の組み合わせが必要なのとちょうど同じように,爆発的な社会的伝染も影響のネットワークが適切な条件を満たす必要がある.

と,あって,論文にも引用させてもらおうと思った.
ワッツの一貫した主張は,インフルエンサーは存在しない.「たまたま」その種が大きくなって広がるだけだという主張.


Yahoo!に移ってからはAmazonのメカニカルタークを使って社会学的な実験もこなしている模様.Yahoo!の会員協力と広告効果の実際の測定(見せた群と見せなかった群での差異をみる)してみたり.一貫して,ワッツは社会学者としての立場をとる.

(社会科学の)未解決の問題はたくさんあり,電子的データがいくらあろうと,そこから社会学的に意味のある推測を引き出すわれわれの能力は制限されている.量があるだけでは万能の解決策にならないのは間違いない.
それでも,観測データが飛躍的に得やすくなり,かつては想像しがたかったほどの規模で実験がおこなえるようになったおかげで,社会学者も他の分野の科学者がずっと慣れ親しんできたのと同じ形で,人間の集団行動を測定,理解し,うまくすれば予測可能な世界を想像できいるようになっている.

未来は明るい.

偶然の科学

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