JIMS「消費者行動のダイナミクス」研究部会

  • 報告1 情報可視化とデザインの間
  • 橋本 康弘 東京大学 工学系研究科 システム創成学専攻
  • 情報可視化の目的の一つは統計データの可視化である。近年ではとりわけライフログの集積と分析の基盤が整ってきたこともあり、人々の消費活動や創造活動、コミュニケーションの可視化が注目を集めている。そこから明らになってくるのは、人々に潜在する活動の背景であり、言い換えれば、人々から行為を引き出す環境のアフォーダンスである。人々の活動の背景を顕在化させる仕掛けを工夫し、また日常の中で背景が顕在化する瞬間を見出していくセンスを養うことは、生き残るシステムをデザインする上で大きな意味を持つ。近年の情報可視化の事例を踏まえて、この「可視化」と「デザイン」の関係について議論したい。


大規模な人間の行動データがあった時に、それらを可視化することで、人間が無意識に取る行動を顕在化させて、新たな知の発見や、新しいデザインにつなげて行こうという試み。
「言語情報そのものから行為を捉えることは本質的に困難」なので、場所、頻度などのメタ行動データを使う。
これは大阪ガス行動観察研究所とか、大阪大学の松村さんの仕掛学の試みにも共通すること。
けもの道、みたいなイメージ。無意識の積み重ねから、新たな意識が見えてくる感じ。


しかし、可視化の図に使われる配色やフォント1つとっても、いちいち美しく、
特に最後に見せてもらった、表参道エリアのツイート分布の認知地図の動画は、
まさに、「都市の鼓動」と言った感じで圧巻。楽しかった。

考えなしの行動?

考えなしの行動?

  • 報告2 購買履歴データを活用した エージェント・シミュレーション・モデル構築の試み
  • 藤居誠 東急エージェンシー QPR推進部
  • スキャンパネル一人一人の購買履歴をベースとした、エージェント・シミュレーション・モデルの構築とシミュレーションの結果を紹介する。エージェント・シミュレーション・モデルの構築では、購買履歴データから得られたモニタの購買頻度や購買確率といったパラメータを用い、エージェント=スキャンパネルとし、実データに即したモデル構築を試みる。シミュレーションでは、広告キャンペーンなどの外性変数をモデルに投入することで、パネルの購買行動の変化を観察するなど、マーケティング課題に沿ったモデルの発展性について検討していく。


マーケティングにおける中心的課題、「どんな人が、どんなものを買うのか?」に対して答えるため、アンケート調査やエージェントシミュレーションを行う話。
世の中にはマメな人もいるもので、その人をパネルまたはモニタという。パネルさんの作ったデータを「パネルデータ」という。パネルさんは携帯型バーコードリーダーを用いて、毎日、自分が購入した全商品の情報をシステムに送信する。さらには、30分刻みの行動を記録したや、何のテレビを観たかの属性調査まで。
現段階のエージェントシミュレーションでは、消費者間の相互作用が入っていなかったり、
消費者はベルヌーイ的に購入する/しない、の独立事象としての購入行動を行っている。
さらには、広告の忘却率も線形に減って行くようなモデル。

なので、消費者間の相互作用の導入、人の行動がランダムではない(マイ板チョコブーム的な)仮定、と発展させて行くと面白いだろうなと思った。あんまり一気にごちゃごちゃやっても仕方がないけど。